光に向かって

 自分には従妹が大勢いて、ために、まだ若い一人身の者も結構いる。
そいつはみんなから“あっくん”と呼ばれて、まるでペットのように扱われていた。
 ペットのようにというのは可愛いがられていたけど自分からは何も意思表示をしない…そんな奴であったということだ。こちらから何か話しかけても「うん」とか口にするだけでそれ以上の言葉は発しない。でもいつもニコニコしていた。
 自分の考えとかはまるで話さない…“自分の意志というもの”はあるのだろうかなんてときどき思っていた。

その“あっくん”がB'zの大ファンだったことがわかった。熱狂的なファンで、もちろんファンクラブにも入っていて部屋にはパネルやらなんやらいっぱいあったようである。
そしてこれまたドラゴンズ大好きで荒木選手が大好きだったこともわかった。
そして一番驚いたのは常々ほかの従妹に「従妹会やろうよ」と言っていたことを聞いた時だった。
あの居るのか居ないのかわからない“あっくん”がである。

それを知ったのは 残念ながら彼がこの世の人でなくなってからであった。
夜中の交通事故。
なぜそんな時間にそんなところを走っていたかはわからないが、
事故から十数時間後に“あっくん”は逝ってしまった。

葬儀場にはB'zの曲が流れ
ひつぎには荒木選手の背番号2番のユニフォームが納められ

そして通夜の後
夜通し従妹たちと一緒に飲み、語り、“あっくん”と一緒に「従妹会」をした。

聞いていただろうか“あっくん”

奇しくも自分の誕生日に君を送ることになろうとは夢にも思わなかったよ。
9月13日は一生忘れられない日となってしまった。

今朝もらったあるバースデーメッセージに
「光に向かって頑張ってください…」という言葉があった。

斎場で骨ひろいの時間待ちに、まだ夏の日差しの強い森に向かって光に向かってシャッターを切った一枚である。


“あっくん”の最後の輝きのような気がした。

あきまさ斎場.jpg
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